福井県民生活協同組合
(すべて受賞当時の情報です。)
- 設立
- 1977年9月
- 代表者
- 理事長 藤川 武夫
- 所在地
- 福井県福井市開発町第2号1番1
- 組合員数
- 117,981人
- 出資金
- 66億6,491万円
- 事業高
- 189億238万円
- 経常剰余金
- 4億620万円
- 職員数
- 704名
- URL
- http://www.fukui.coop/
- 沿革
- 福井県民生活協同組合は福井労済生協(現:全労済福井県本部)物資部での共同購入(無店舗)方式による5年間の食品供給活動を経て、“組合員の願いを寄せ合い協同の力でよりよいくらしを実現すること”をめざし、1977年に創立されました。福井県全域を対象とした共同購入で食品供給を行う本格的な地域購買生協が初めて誕生し、「家族の幸せと健康、安全な食べ物、くらしの向上、安心してくらせる平和なくらし」を願う消費者が組合員となり、組合員自らが組合員を拡大し利用の普及を図るとともに、グループ(班)でくらしの問題を教え学び合い、助け合うことで当生協の組織は拡大してきました。
当生協では「組合員の参加・参画」「安全・安心」「組合員へのお役立ち」「安定した経営」の4つの組合員価値を大切にしており、その根本には“生協は一人ひとりの組合員自らが出資し、利用し、運営に参加・参画する三位一体を運営原則とした組合員の組織”であることがあります。この三位一体の仕組みを活かし、食の安全とくらしの安心を実現することで組合員一人ひとりが求めるニーズに合った商品・サービスを提供し続けることを追求しています。加えて“安全・安心”、“組合員密着”、“組合員の参加・参画”で築いてきた組合員の信頼をさらに長期的で不動のものとするために、組合員へのお役立ち度を無店舗・店舗・共済・高齢者介護・子育て支援の5つの事業による“事業ネットワーク”により、さらに高めたいと考えています。 - 業務内容
- 当生協は消費生活協同組合法に基づき、福井県内のみの事業展開で、1000円以上を出資し組合員になった福井県内に居住・勤労する人を対象に供給事業・共済事業を行うように定められています(ただし高齢者介護事業・子育て支援事業は組合員以外でも利用可能)。創業となった「無店舗」事業の組織基盤の上に、1991年に「共済」事業、1996年に「店舗」事業、2000年に「高齢者介護」事業、2005年に「子育て支援」事業を展開してきました。
具体的には、組合員が参加・参画して開発した安全・安心なコープ商品、組合員と生産者が提携して育てた産直商品を中心に、当生協の安全・安心の自主基準をクリアした食料品・日用品を取り扱い、店舗では特に地場商品の品揃えも進めています。これらの商品を「無店舗」事業では週1回の配送で組合員にお届けするとともに、「店舗」を県下4箇所に展開をしています。また組合員相互の助け合いを基本に、特に男性に比べて保障が少ない女性と子どもを対象とした商品を提供している「共済」、居宅介護支援(ケアプランの作成)・訪問介護・通所介護・福祉用具レンタルなどの「高齢者介護」や、親子ひろば運営・乳幼児一時預かり・曜日別保育や育児悩み相談・親同士の交流支援・食育情報提供などの「子育て支援」、といった事業を行っています。 - 経営品質向上活動への取り組み
- 当生協では、2000年から3ヵ年連続で減収という創立以来初めての苦い経験を味わいました。これは組合員の満足に充分に応えきれなかった結果と受け止め、生活協同組合の基本である組合員満足向上の原点にもう一度立ち帰り、しっかり対応できる職員組織の形成と卓越した成果を実現する経営組織の再構築の必要性を痛感しました。一方で、地域社会における社会的存在と責任が大きくなるにしたがい、さらなる飛躍のためには組合員の信頼をより一層高める努力を通じて、地域社会に開かれた組織として理解され親しまれることで社会的信頼を確かなものとしていく必要性を強く感じていました。
2001年度より先進企業などのベンチマークを進めていましたが、これらのことを背景に、2002年度、経営トップをはじめとした幹部職員がセルフアセスメントコースを受講し、本格的な経営品質活動をスタートさせました。2003年度に福井県経営品質賞「優秀賞」を受賞。その後も2004年度「優秀賞」、2005年度は「知事賞」を受賞しました。その度に得られるフィードバックレポートにて、当生協の現状レベルを認識し、ステップアップするための気づきを得ることができました。そしてこの6年間にわたる経営品質向上活動を通じて、「食と福祉と助け合い」の事業と活動のネットワークによるシナジー効果で組合員へのお役立ちを高める「事業ネットワークマネジメント」というビジネスモデルを推進しています。
表彰理由
福井県民生活協同組合は、「組合員の願いを寄せ合い、協同の力でより良いくらしを実現すること」を目指し、組合員本位の経営を行っている。主体である組合員はじめ、職員や組織のあらゆるステークホルダーと理念(*1)を共有するためにコミュニケーションを大切にしている。特に、多くの組合員がより安全・安心を意識し、より良い食生活を考え、実現できるよう情報提供の場を作り組合員が生協活動により積極的に参加することを促している。現場の職員は、組合員価値を実現する為に苦情や要望をはじめ、現場での観察から組合員視点での自立した改善・改革活動を行っている。また、上司との話し合いを通して、現場の気づきを商品開発や品揃えはじめ新たな戦略に結びつけている。この結果、県内加入率は43%に達し、年間3万人以上が食の安全などをテーマとした理念を浸透させる様々な活動へ参加し(参加率前年比増+28.6%)、チェーンストア売上が伸び悩む中で店舗事業は年10.4%の成長を遂げている。
- 理念に基づく経営の浸透
- 「食の安全・安心」「組合員の参加・参画」「助け合い」を組合員価値観として、この全ての価値観を経営幹部が大切にし、その価値自体の意義についての議論が続けられている。そして、その価値観は単に抽象的な概念としてではなく、安全・安心な食の提供、保育、介護など、現実の商品・サービスを提供する際にも議論され、価値観が戦略に具体化されている。
- 傾聴の姿勢の徹底
- 経営幹部は、職員に対しても、組合員に対しても、まずは意見をじっくりと聴き、要望があれば必ず回答するルールを作り、傾聴を徹底している。傾聴の姿勢と確実な対応は、職場や組合員との各種会議を活性化させ、職員や組合員からの意見を活発に引き出すことに成功している。その結果、組合員からの声が現場に届き、また、現場での出来事や気づきが迅速に経営幹部に伝わり、これらの情報が戦略の策定に大きな役割を果たしている。
- 組織全体で考える風土に基づく創発
- 理念の共有により、正規職員はじめ一部定時職員も含め自らが組合員へ価値を提供する主体者であるという考えが徹底しており、現場においても、この考えに即して「何が組合員に必要か」を仕事を通して常に考える風土ができている。その結果、現場において、多くの気づきが生まれ、その声が経営幹部まで届いており、ネットワーク戦略、子育て支援事業や高齢者介護事業、その他ボランティア活動などとして成果を挙げている。
- 組合員を巻き込んだ迅速な活動
- 職員だけでなく、組合員の気づきから検討された活動や仕組みは、職員とともに、活動や運営に参加した組合員も含めて検討され、できることから現場で実行(*2)に移されている。そして、その結果を振り返り、新たな戦略や仕組みづくりが行われている。この結果、競合他社とは異なるコンセプトの店舗設計、品揃え、サービスの提供などが行われている。
*1)「組合員の満足と地域社会のため、『食と福祉と助け合い』の事業と活動のネットワークによるシナジー効果を発揮し、健康長寿で安全・安心な福井づくりに、
組合員と職員の協同の力で高い志をもって挑戦し続ける」こと
*2)例えば高齢者介護や子育て支援といった地域社会のニーズを抽出・把握し、まずボランティアとして活動を始め、ボランティア活動段階から徐々に組合員を巻き込みながら、その後の事業化の検討(例:くらしの助け合いの会)や事業化(例:NPOと協働での子育て支援施設)が行なわれ、地域の生活水準向上に繋がっている